メスを持たない日には

外科医の、寄り道

海外ドラマレビュー「Slow Horses:窓際のスパイ」

カメレオン俳優、ゲイリー・オールドマンの存在感が際立つ

Slow Horses (2022) on IMDb

個人的評価:★★★(3.5/5)

はじめに

私は断固としてApple信者ではないが、テレビを買ったときにたまたまAppleTV+の3か月無料特典が付いてきたので、まあこの時だけはリンゴでも齧ってやるかという気分になった。

さてApple TVだがあまり目ぼしい海外ドラマがやっていない。何を観ようかとスクロールしていると少し前に後輩が面白いと言っていたドラマを思い出した。タイトルは覚えていなかったが、ゲイリー・オールドマンが主演ということだけは記憶していたのですぐ見つかった。

それにしてもまず、この日本語のタイトルは何だ。黒柳徹子じゃないんだから。公園で遊び疲れた小学生が、トイレで糞をしながら思いついたのかとしか思えないようなタイトルだ。お尻ぺんぺんモノである。英題を残してサブタイトルにしてくれただけでもグッドジョブとしよう。

どんなドラマ?

このドラマを一言で表現すると、「イギリスらしいユーモアたっぷりの異色スパイドラマ」である。今のところシーズン3まで出ていて、1シーズン6話完結型。出ているキャラはみんな正にイギリスっぽい風貌で、その服一体いつ買ったんだよという格好。 

 主人公のLambたちはMI5*に属するものの、過去に何らかの失態を犯してSlough House(沼地の家)と呼ばれる暗い建物に左遷されている。なるほど、皆一癖も二癖もあるキャラクターなのも頷ける。なかでもLambは特級のキャラの濃さ。部下への皮肉は苛烈そのもの。日本人の部下ならノイローゼになっているだろう。ドクターハウスのHugh Laurieもそうだが、この手の偏屈上司はイギリス人が本当に良く似合う。

 彼らの仕事ぶりは正にSlow Horses(遅い馬)ではあるが、元敏腕スパイのLambの統率?もあって回り道をしながらも何とか良い仕事をするようになっていくのだった。目の肥えた海外ドラマファンでも楽しめる、骨太な感じだ。

*MI5:イギリス国内で諜報活動を行う情報機関。007が所属するのは国外活動を行うMI6。

見どころと感想

このドラマの面白いところは、Slow Horsesと敵対するのが同じMI5組織の本部である点と、敵対とはいえ真っ向から殺し合うわけではなく表向きはあくまで協力という形で裏で駆け引きをする点だ。ここがいかにも「諜報」らしくて見ごたえがある。

 それからもう一つは、登場人物全員の「パッとしない感」。あの名作Line of Dutyを思わせる。紅茶を淹れてスコーンを食べながらじっくりと観るに相応しい、そんなドラマなのである。

 シーズン1を見終えた感想としては、このドラマの魅力の大部分が主演俳優に依存している感は否めない。存在感が大きすぎる。でも脚本がしっかりしているのでシーズン1は十分楽しめた。6話完結というのもよろしい。次のシーズンでどれだけ飽きずに観られるのかが分岐点になるだろう。

Good morningとおはようございます

Port WashingtonからManhasset bay(マナセット湾)を望む

ゆっくりマスターズを観ながらブログを書くなんて、すごく贅沢な時間だ。思えば8年前に初期研修を終えてから、ひどい月では一日も休みがなかった。すごい体力ですね、と言われることも多いがその時は決まって「我々はサメと同じで休むことを知らないだけです。泳ぎ続けないと死んでしまうから。」と返していた。

アメリカに来て身分が「医師」から「研究者」に変わった。職業欄に「Doctor」ではなく「Researcher」と書くのはまだ馴染まないが、病棟から呼び出される心配もなく、平穏な週末を過ごせるのはすごくハッピーだ。

良く晴れた朝、散歩にでかけると沢山の人とすれ違う。「Good morning」と挨拶を交わす。今までGood morningという言葉について深く考えたことなどなかったが、「おはようございます」とは少し趣が異なって聞こえる。「Good morning」と「おはようございます」は両者とも「共感」を含んでいるが、前者は「なんていい朝なんだ、お前もそう思うだろ?」という感じで後者は「こんなに早くから、お互いご苦労様ですね」という感じ。とにかく、冒頭の写真のような透き通る朝には「Good morning」が似合うのだ。

でも一つ疑問に思うのは、果たして彼らが雨がしとしと降る肌寒い朝でも「Good morning」と言うのかどうかということ。まさか「Bad morning」とは言わないだろう。それとも彼らのことだから何か別の挨拶をして、そこからスモールトークでも始まるのだろうか。早く雨の朝を迎えたいなと、待ち遠しいのである。

GEICOで決まり?アメリカの自動車保険事情

写真はGEICOのHPより引用、加工

この記事で伝えたいこと

アメリカの自動車保険は驚くほど高い。

・直接現地の会社と交渉して見積もりを取るべき。

・何とか日本の運転歴を考慮してもらって、年額を下げよう。

 

アメリカの車・保険事情

日本からNY州に引っ越してきてはや1週間。色々悩んだ挙句、車は日系の中古車販売店ガリバーNY」で契約したものの納車までに自動車保険を契約せねばならない。他の駐在の方々のブログでも散々書かれている通り、アメリカの中古車は日本の感覚からは考えれないくらい高い!!!(購入したTOYOTA RAV4 2017年で諸経費込み26000$=400万弱)。

その分、リセールも高いので(トヨタ車なら3年で55%くらいらしい)一括購入することに決めたものの手持ちのドルでは足りず円→ドルに換えないといけない(数日前に何十年ぶりかの153円台に突入したところ😂)。。円安吹き荒れる今、アメリカで生活を始めるのは逆風のなか地を這って進むような感覚だ。

我々、留学医師は誰も費用を負担してくれないので保険も全額自腹なのである。そしてこの自動車保険も、アメリカはべらぼうに高い(下記)。

ニューヨークとカリフォルニアの年間平均保険料
(Fullは日本と同じくらい、Minは州が定める最低限の補償を満たす契約)

NY:Full coverage=$4205、Minimum coverage=$1661

CA:Full coverage=$2975、Minimum coverage=$824 

Compare Car Insurance Rates for April 2024 - NerdWallet

 

なぜ自力で現地の保険会社を探すことにしたか

恐らく駐在でNYにやってきた日本人は生活の立ち上げを日系企業ネットワークに依存して済ませるパターンが多いのではないか。我々は出国直前に挙式を予定していたこともあり、出来るだけ省エネで渡米準備をと考えていたため、多少の手間賃覚悟で日系不動産会社・リダックを通じてアパートを契約した。中古車購入に関しても、在米歴の長い方はCraiglist(メルカリのアメリカ版)やFacebookマーケットプレイスで購入するのが流行りのようだが、免許も保険もソーシャルセキュリティナンバーもない新参者にはハードルが高い。そのため、これまた日系のガリバーさんで車も購入した。

しかし渡米して2週間で徐々に英語による様々な交渉や電話対応にも慣れてきたので、そろそろ日系会社に頼らず、自力で保険くらい契約してやろうという気になった。加えてネット界隈では現地の保険会社でQuote(見積もり)を取って安くなったという口コミも多かったこともある。

契約に必要な知識として

アメリカの自動車保険トップシェア3社はState Farm、Berkshire Hathaway、Progressiveらしい。Berkshire Hathaway社は投資の神様・ウォーレン・バフェットのおかげで唯一知っていたので、その自動車保険部門であるGEICOでとりあえず見積もりを取ってみたのだが、ここから本当の戦いが始まったー。

まず補償の用語が分からない。基本的に見積もりを出した後、電話がかかってくるので交渉するためにはまず用語を理解することが不可欠だ。

主な参考用語たち

・Bodily injury (対人事故)+Property damage(対物事故)の補償=Liability Coverage

・Liability coverage + Comprehensive, Collisionなど(車両保険その他)など=Full Coverage

*ComprehensiveはCollison以外(自然災害や鹿衝突・飛び石)の補償を指す。
*ComprehensiveとCollisionの項目を決定するためにはDeductive(車体修理の時いくらまで自腹で出費するか)を設定する必要がある。通常$500か$1000でOK。当然、保険料は$500の方が高い。

・Uninsured/Underinsured=無保険車(車人口の10%以上)に対する補償額。

・Towing=レッカー代。

ここで注意が一点。日系の代理店を挟んで見積もりを取ると、大体Bodily injuryを$250000/$500000以上で設定される(それに加えてUmbrella保険という補償額引き上げプランも)ことになる。アメリカ人からすればこれは結構法外な金額らしく、電話で保険屋と話す時も驚かれた。彼が言うには、「そんなに高い補償額を設定するのは別荘持ちの超高額所得者だけ」らしい。しかし、日本人的感覚では万一の保証はしておきたいので私は$100000/$300000に設定した。

ComprehensiveやCollisionなどの車両保険は完全に個人の裁量なので、日本での運転経験などを考慮して決定すればいい。アメリカは路面が悪いので飛び石リスクがあり、田舎町で鹿にぶつかった友人もいるのでComprehensiveはDeductive$500、CollisionはDeductive $1000に設定した。

Towing(レッカー代)に関してはAAAというJAFアメリカ版に加入すればサービスを受けられるし、AAAは是非加入すべきとの助言を先輩から貰ったので省略予定。

どの保険会社が良いか?

参考のため、各社の平均的な保険料を載せる。先述の通りアメリカでは州によって大きく保険料が違うことにも注意が必要だが、GEICOは安いし日本人ブログ界隈でも結構評判が良さげである。

https://www.nerdwallet.com/a/insurance/car-insuranceより引用

私が見積もりを取ったのはTravellers(日系保険代理店を通して)、State Farm、GEICOの3社である。実際に電話で営業と話したのはGEICOとState Farm。2社ともすごく丁寧な営業で、特にGEICOは親身になって色んな割引も提示してくれた。GEICOのネットの見積もりは何度でもできるので、保険額やその他条件を変えて色々試すのがおススメ。

 試行錯誤の結果、保険料に大きく寄与するのはアメリカでの運転歴のようだ。日本で免許取得後15年くらいだが、こちらでは基本的に初心者扱いだ。そのため保険料がグググンっ!と上がる。ざっと年間$1000くらい違う。日系保険代理店の担当者に聞くと、彼らは日本の運転歴を考慮できるように保険会社と独自に交渉するため多少安い保険料を提示できるとのこと。それでも上記の補償額設定で年額$3400の見積もりだった。

 私個人の所感としては、日系代理店の見積額に納得が行かず、彼らの挙げる日系会社のメリットがイマイチ魅力に映らなかった。そのため、一度GEICOに日本の運転歴を考慮してもらえるか交渉することにした。そして、日本の免許証と国際免許があれば考慮可能とのことであった。

最終的な結論

GEICOにはDriveEasyという運転モニターシステムがあり、これを契約すれば保険料を10%割引にできるとのこと。またDMV(Department of Motor Vehicles:車両管理局)の講習を受けても更に10%割引がある。提示された保険料(これらの割引適用前)は年額$3180。この見積もりを武器に更にAAAでも交渉するか考え中である。最終的に契約したら、追記予定。

バンコクのゴルフ事情🏌️‍♂️

先週末から4泊5日でタイはバンコクへゴルフ旅行に行ってきました⛳2月のタイは一年の中でもそこまで暑くなく、ゴルファーにはいい季節。初めてタイへ行ったのは社会人2年目の時だからもう7年も前。。当時は1バーツ=3円台だったのが今では円安もあって4円台に!物価はまだまだ安いが、昔ほど「安い!」という感動はない。
バンコク市内ではHappy richという両替所が安くておすすめで、大体1円=0.237-0.239バーツくらい。

 

今回は学生時代に母校へ臨床実習に来ていたタイ人の友人・Ruay(産婦人科医)のもとへ、ゴルフ仲間3人での遠征。Ruayは当時から本当にナイスガイで、今回も3つのゴルフ場の予約からレストランの手配まで全部やってくれたのだった。ありがとうMy man!!というわけで、ネット上でも様々な情報が飛び交うバンコクのゴルフ体験をありのまま書いていきたいと思う。

 

① ナイトゴルフについて

The Pinehurst Golf Clubでのナイトゴルフ①
The Pinehurst Golf Clubでのナイトゴルフ②。タイの3人の友人と共に。

 

バンコクの昼間は極めて蒸し暑いため、早朝のラウンドかナイトゴルフがおすすめ。
といっても夜でも十分暑いのだが。。それでもナイトゴルフの方が格段に楽しい🌃
今回はRuayが更に現地の友人たちを誘って5-6人でラウンドしたので、キャディも混じって総勢10人以上のパーティ・ムードの中、日本では絶対味わえないラウンドが実現した😊

 

キャディはPretty caddyと呼ばれる若い女子大生くらいのキャディが1:1でつきっきり。各カートにはJBL製のポータブルスピーカーか完備されており、Spotifyから好きな曲をかけてくれる🕺
とにかくノリが最高で途中で「ドラえもん」の曲をかけてダンスしてみたり。日本のお堅いゴルフとは180度違う。ただ人数が多いので18時半のスタートで終わる頃には日付が変わっていた😂

Ruayの弟がでっかいバンを持っていて、送迎までしてくれて本当にお世話になりっぱなしだった。

② タイ人のゴルフ

「When you are in Rome, do as the Romans do.」というのは全世界共通の諺で、日本語では「郷に入っては郷に従え」という意味だ。海外旅行をMAXで楽しむポイントはまさにこの諺通り、現地のスタイルを実践してみることにある。どうやらタイ人が仲間でゴルフをする時は各ホール毎にゲームをしながら回るのが流行のようなので、乗ってみることにした。
その結果、各カートに1ボトルのタイ国産ウイスキーが配備され、ボギー以上で1ショット、バンカーに入れたら1ショット、池に入れたら1ショット、パーorバーディを取ればキャディが1ショット飲むというルールで18ホール回ることに🤣

酒豪揃いのタイ人(女の子も強い、、)に負けないように、日本においては酒豪の部類に入る私も日本人の意地を見せるべく奮闘!
終える頃にはべろべろで何も覚えていないがスコアだけはつけていたようで😉、なんとベストスコアを叩き出すことができた🙌

どうやらこれまで私に足りなかったのはショット(アイアン)ではなくショット(酒)だったようだ🤠

ちなみにお酒が苦手な人も、このゲームは平和に断ることが出来るので心配無用。
ゴルフ文化の違いが体験出来て非常に有意義なラウンドだった。

南国の夜で大好きな友人たちと騒いで回るナイトゴルフは、格別の思い出になった😎

タイの国産ウイスキー。甘く、ラムに近い風味。18ホールでカラに。

 

③ コースの値段について

Pinehurst Golf Clubの価格表

今回ラウンドした3か所のコースの料金は以下の通り。

ナイトゴルフ@Green Valley Golf Club
プレー代+カート代+キャディ代=2700バーツ、キャディへのチップ=1000バーツの計3700バーツ

ナイトゴルフ@The Pinehurst Golf Club
プレー代+カート代+キャディ代=2500バーツ、キャディへのチップ=1000バーツの計3500バーツ

デイゴルフ@The Legacy Golf Club
プレー代+カート代+キャディ代=1900バーツ、キャディへのチップ=500バーツの計2400バーツ

写真は参考までに、The Pinehurst Golf Clubの価格表。どれも名門のコースでの価格だが、Pretty caddyがついたのでナイトゴルフの値段とチップ代は少し割高になっている💸

 

④ コースの難易度、メンテナンスについて

The Legacy Golf Clubのコース写真

日本でのアベレージスコアは101だが、タイでの3つのゴルフ場は97-97-93と日本よりもいいスコアが出た。普段は兵庫の山岳コースを回ることが多いが、タイはフラットでOBが出にくいのが良かったかと。ただ、どのコースも左右半分が池やバンカーだったり、浮島グリーンがあったりとハザードは多い。

普段はやらないが、1,10番ホールのティーショットはMulligan(マリガン)が適用された🏌️

コースのメンテナンスはどこも最高で、これはキャディたちがみんなディボットの修繕や雑草抜きをしながら回っているためで、ほぼグリーンも凹凸がなかった。

 

⑤ 19番ホールについて

最後に、一部のHPで触れられている19番ホールの噂について個人的な意見を書いておきたい。噂の内容は「ついてくれたPretty caddyをお持ち帰りできる」というものだが私の所感では、「あくまでウワサ」

ちなみにThe Pinehurst Golf Clubには19th holeという名前のレストランが併設されているため、噂が独り歩きしたのではないかと思う。

Ruay曰く、The Pinehurst Golf Clubはキャディのノリが良くてナイトゴルフをするにはもってこいとのことだが、彼女たちは普通の女子大生であり、そういったサービスを提供するセックスワーカーではないので注意してほしい。キャディをしてくれて、おまけに盛り上げてくれるありがたい存在なのだ。「この後、〇〇バーツでどう?」などという交渉は間違いなくトラブルのもとになるだろう。

ただしお酒も入る場であることは確かなので、若い男女お互い気に入れば仲良くなることは当然あり得ると、私にはそこまでしか言えない。

 

番外編:バンコクのゴルフショップ

EMPORIUMというデパート内のゴルフショップ。かなり充実。

一緒にラウンドしたタイ人はほとんどがTaylormadeを使っていた。Titleistは一人もおらず。。ゴルフは結構人気があるらしく、EMPORIUMというショッピングモールには各メーカー独立したブースを出店していてかなり充実。CobraやHommaなどのメーカーもあった。

当然ながら、値段が安いということはなく、むしろ日本の方が安いくらい😔バンコクでゴルフをする層はなかなかの富裕層と言えそうだ。

 

今回の旅行は「ゴルフ合宿」と呼ぶに相応しく、2日間で3ラウンド、しかも終わる頃には深夜というハードスケジュールだった。

思えば、Ruayと出会ったのもお互いが学生だった10年前。日本語で「寒い」を連呼するので、「そら、寒いわなあ。」と気の毒に思いつつも、冬空のなか慣れないコートを着て歩く姿が可笑しく、店内が暖かい焼肉など連れて行ってあげたっけ。

その後、パタヤに遊びに行った時にはすごく良くしてくれて友情が深まった。彼は数年前に結婚したが、コロナのため式に行けなかった。

そして今回、久しぶりに私が結婚前のバチェラー旅行がてら彼を訪れたのだった。
独身のフィナーレを飾るに相応しい最高の旅行だった。

哀愁の兵庫 part3「知られざる但馬 其の一」

さて久々に、哀愁の兵庫シリーズを更新したい。

突然だが私はなぜか、但馬地方にすごく愛着を感じている。

但馬の四季は本当に美しい。春の桜は言うまでもなく、瑞々しい新緑が点々と山肌に交じり始めたかと思えばそれは深いグリーンに変わって夏の訪れを知らせる。秋には他の場所よりも一層早く黄や橙に色づき、涼しい風が吹いたかと思えばもう氷ノ山は新雪を頂いている。

都会で育ってきたのに、いや都会で育ってきたからこそなのか、神戸の活気に息が詰まりそうになることがある。
誰かが傍に居てくれるということは、それはそれで素晴らしいことなのだけれど、ただじっと時の流れに揺られたい時だってあるのだ。

そんな時には無性に、何も物言わぬ自然に身を浸したくなる。
やっぱり人間は、自然から生まれたものなのだから、誰もが心のどこかでは自然の中で過ごす孤独に焦がれているんだと思う。

とある晩冬の晴れの日。養父市を流れる八木川の先に見えるのは氷ノ山であろうか

そんな但馬へは、2年前の夏から月に1回か2回仕事で行っている。

同じ兵庫県かと信じられないくらいに但馬地方の冬は厳しい。私はスタッドレスタイヤを買うことを惜しんだため、雪のシーズンには電車で4-5時間かけて向かうことになる。地方へ向かう電車と言えば閑散としていてもの寂しいイメージがあるが、但馬地方の日本海側はカニの名産地であるが故、老若男女で賑わいを見せる。年頃のカップルに交じって髭面の男が1人で座っているのは、何となく目立つ気がして気恥ずかしいものだ。

2年前のクリスマスは大雪であった。電車が止まったため、
浜坂から湯村温泉を経由してバスで帰路へついた。写真は旅館「井づつや」

但馬は広い。京都府に接するカニで有名な城崎がある豊岡市から、鳥取県に接する新温泉町まで東西に広がっている。広いぶん、養父のあたりと、新温泉町とでは方言も違って聞こえる。無論、「関西弁」のなかでも最も辺縁にある方言と思ってよい。

さて日本海沿岸部はカニホタルイカなどが旨いが、少し山手の養父市には八鹿豚と呼ばれるブランド豚がある。さらに朝倉山椒という山椒や、明治元年創業の谷常さんが作る「鮎のささやき」という銘菓も有名だ。しかし神戸に住む私にとっても車がないとアクセスが悪いため、県外からの旅行者や海外からの観光客にはハードルが高い。訪問者の多い城崎からの流れを作ろうにも、繁忙期のカニシーズンは雪のためなかなか難しいのかもしれない。我々の休みだとせいぜい一泊二日のため、足を延ばして近隣の観光までするには短すぎる。となると、近年著しい増加を見せる海外観光客をターゲットに何とか「城崎以外の但馬」へのマイクロツーリズムを提案していきたいところだ。

と、いつの間にか但馬地方の振興について考えてしまっている。とにかく確かなことは、日本を離れた時に私が郷愁を覚えるのは神戸のオシャレな街並みではなく、但馬地方の大自然とそこに流れる穏やかで平和な時間・人々の暮らしであることは間違いないのである。

 

海外ドラマレビュー「TOKYO VICE -season 1-」

去年からWOWOWでテニスを観るようになってから、オリジナルドラマのクオリティがなかなか高いことを知った。

そんな作品の中で目に留まったのが大好きな映画「HEAT」のマイケル・マンが監督
した、その名も「TOKYO VICE」。

逆さまになった東京タワーがオシャレ

 IMDb: 8/10、Rotten Tomatos: 85%、Metacritic: 75/100となかなか高評価。

 舞台は90年代、東京。明朝新聞に勤める若きアメリカ人記者がネタを掴むために奮闘する中、段々とヤクザの世界とズブズブになっていき、、、。

 まず本作品で特筆すべきは俳優陣の豪華さ。主人公・ジェイク・エーデルスタイン
(実在の記者)を演じるのはアンセル・エルゴート。どっかで観たことあるな…程度だったが、後から調べたらベイビー・ドライバーに主演してたみたい。この映画はイマイチ
だった。。

 むしろ日本人の我々からしたら、脇を固める俳優がより豪華。硬派だが家庭を愛する刑事を演じるのは渡辺謙。主人公の上司役に菊地凛子(バベル以来久しぶりに見た)。メインとなるもう一人の刑事には伊藤英明。うーん正直、刑事役には少し男前すぎる。
Line of dutyシリーズみたいなパッとしない平凡顔の方がリアルで嬉しい。
ヤクザ役の俳優たちもみんなキャラが立っていて素晴らしく、石橋蓮司もチラッと出てくるあたり「わかってるな。。」という感じ。

 海外ドラマで描かれる日本と言えば、ひと昔前まで「なんか違う」感が満載で、
日系人がペラペラの英語で喋ったり、日本人ぽくない行動や感情表現をして??というイメージだった。しかし最近の(動画配信サービスが始まった影響?)日本を舞台に
したドラマはクオリティが一層上がっている。
 少し前にNetflixで見たGiri/Hajiも、これもヤクザモノだが結構良かった。まぁ、BBC
制作だし。

 そしてこのドラマに出てくるキャラクター、みんな「カッコいい」のだ。90年代東京という時代設定が既にイケてる。主人公の記者はアメリカ人だがいわゆる「タフガイ」タイプではない。甘いマスクに長身のいわゆるイケメンで、向こう見ずでハングリー
精神旺盛な所に好感が持てる。
 硬派な刑事、渡辺謙。はい、かっこいい。善・悪のグレーゾーンを行く伊藤英明
かっこいい。部下を厳しくも導く女上司、菊地凛子。かっこいい。その他ヤクザの皆
さんも総じてカッコいい。 

 そんな中、一押しポイントは千原会に所属するヤクザ・佐藤を演じる笠松将
見事に、欧米人ウケがしそうなルックス。渡辺謙とか真田広之は結構濃い顔で、個人的にはブラピやディカプリオと並んでもいいくらいに渋カッコいいと思う。
この俳優は2人に比べて男前度は劣るが、日本人の持つオリエンタルなエキゾチックさと物静かさを兼ね備え、それでいて力強さを感じさせる独特の雰囲気に包まれている。これからブレイクしそうな予感がするなぁ。

 ここまで背景的な部分ばかりについて書いてきたが、ストーリーも飽きの来ない展開でテンポも良い。ヤクザドラマと言えば刃傷沙汰など残酷なシーン目白押しのイメージだが、本作品では全然許容レベルだ。嬉しいことに来年にはシーズン2が公開される
とのこと。今回のラストがあまりにも突然だったので、次回作が待ち遠しい。

海外ドラマレビュー「The Offer-ゴッドファーザーに賭けた男-」

ちょっと趣向を変えて、ゴルフ以外の趣味である海外ドラマについてレビューを。
最近観たドラマ、その名も「The Offer-ゴッドファーザーに賭けた男-」。

タイトルのフォントもThe Godfatherと同じ。刺さる。

IMDb 8.6/10, Rotten Tomato 57%, Metacritics 48/100と若干評価は分かれている。

日本では現在、Paramount+と提携?しているUNEXTでのみ配信されている。

 ストーリーはいたってシンプル。ヒット作に苦しむパラマウントスタジオがWhiplash(邦題:セッション)で一躍有名になったマイルズ・テラー演じるプロディーサーを抜擢し、フランシス・フォード・コッポラや原作著者のマリオ・プーゾらと協力して幾多もの困難を切り抜け名作:The Godfatherを生み出すというもの。

 ゴッドファーザーのファンなら間違いなく観るべき作品だが、かの映画を公開時に劇場で観たターゲット層がこの日本(ひょっとするとアメリカでも)においてUNEXTなどの配信サービスにアクセス出来るかどうか。。

 前提としてゴッドファーのPart Iは観ておかないと話についていけないし、そもそも観たことがないとこの作品をわざわざ観ようとは思わないだろう。
しかし、原作のファンからしても特に前半はヨダレが出るほどの誕生秘話が目白押し。

 例えば当時無名だったアル・パチーノをマイケル・コルレオーネ役へ抜擢するための苦労話。このアル・パチーノ役の俳優、Anthony Ippolitoさんがもう若かりしアル・パチーノそのもの。特に薄暗い中の照明で少し顔を俯ける映り方!そして声!完全にアル。
 それから、マーロン・ブランド役がヴィトー・コルレオーネをいきなり自宅で演じ始めるシーン。これもハッとさせられるほどオーラが出ていて、さながら本家のよう。
 他にもマイケルがイタリア料理店で初めて人を撃つシーンや、俳優たちが顔合わせをしているうちに完全に役になりきってプロデューサーたちが思わず魅入ってしまうシーンなどなど。

 ここまでグッと来るシーンばかりについて書いたが、この作品自体の脚本というか流れについては今一つ・・・というところ。映画化が軌道に乗るまでのストーリーがやや冗長に感じたり、主演含めなかなか登場人物に感情移入することが出来ず。原作ファンとしてはもっと映画へのオマージュシーンが欲しかったというか。。

 ということで、全体の評価としては65点くらいかな。前半はすごく楽しませてもらいました。